ウルフルズが8月21日(金)に2回目となる有料生配信ライブ「ウルフルズ ライブ2020 ~ミテクレエブリバディ~」を開催した。
開場時間の18時半になり、画面に「始まりは1枚の写真だった」と文言が映り、1枚のライブ写真も映った。日にちのクレジットは、90年6月17日。「ウルフルズ 東京初上陸の渋谷エッグマンはリアル無観客だった… そう、あれからちょうど30年。」という文言も映されたが、東京での始まりは無観客であり、今回は、その無観客の始まりであるShibuya eggmanでのライブ。無観客でしか中々ライブが出来ない、この御時世。逆手というか、洒落というか、ウルフルズらしい会場選びに思わずニヤッとしてしまう。
画面は、トータス松本(Vo.Gt)が神宮通りから公園通りへ上っていく通りを歩いている場面に変わる。「ステージから観たら、誰もいなくて。ライブ内容も全く覚えてないし、記憶から消そうとしてる」と歩きながら、当時の思い出を語る。東武ホテル前では94年当時のプロデューサー伊藤銀次との打ち合わせを思い出し、よくライブを行なったという今は無き渋谷AX跡地や、96年に奥田民生やブレイク直前のPUFFYらとのイベントに出演した代々木第二体育館やNHKが見える場所を通りかかり、「このエリアで思いかけず、仕事いっぱいしたんやな」と明かす。そして、Shibuya eggmanに辿り着き、ライブの準備を行なっている場内にも入り、「ライブハウスの匂いやな…。記憶甦ってくる…。確かにこんな感じやった」と言いながら、楽屋に向かうと、そこにはジョンB(Ba)、サンコンJr.(Dr)の姿が。どうやらライブ直前の当日お昼過ぎだという事もわかり、トータスの「思う存分、無観客のライブやってやろうと思います!」という言葉がより響く。
当日のリアルなドキュメントを観た事で、こちらの気持ちが高まり、時刻は遂に開演の19時。ステージに3人が登場して、トータスの「よっしゃー!!」という叫びから、1曲目「トコトンで行こう!」へ。先程の90年代の想い出ではないが、大ブレイク直前95年の勢いあるナンバー。スタジオで開催された前回の配信ライブと比べて、当たり前だがライブハウス感がある。つまり躍動感を凄く感じる事が出来た。先日、Twitterでトータスが備品倉庫を訪れる動画がアップされていたが、そこで発見された約25年前の「ULFULS」という立体的な文字オブジェも飾られている。ちょうど30年前は無観客だったとはいえ、そこから大ブレイクする約25年前までの何とも言えない初期衝動的なパワフルなエネルギーが2020年の今、Shibuya eggmanにぶちまけられている。当時を知っている人には懐かしく、当時を知らない人には、とても新鮮に映っただろう。続いて、最近の楽曲である「リズムをとめるな」が鳴らされたが、とにかく伸び伸びして生き生きしている。大ブレイク直後の「ツギハギブギウギ」では当時の熱気が伝わってくるし、無観客配信ライブとは想えないくらいに3人がノリにノッている。
ちょうど30年前の思い出話もして、その後は「チークタイム」、「相愛」と一転して緩やかでロマンチックなナンバーへ。そこからの「サムライソウル」ではリズムに力強さも増していき、本当にいつも通りであり、前回少し感じた配信ライブに対するやりにくさも全く感じない。「盛り上がっていきたい曲をやります! どういう気持で聴くのかな、こういう曲は?!」とトータスが話して、鳴らされたのは「ワルツ!」。鑑賞していた多くの人も感じただろうが、何の違和感もなく、画面前で盛り上がって、とっても楽しめた。「ULFULS」という立体的な文字オブジェも光りだし、尚一層楽しい感じが伝わってくる。曲終わり、またもや、ちょうど30年前、いや、そのちょっと前の89年大晦日に生まれたというジョンBの前芸名であるブラック田ヨンピルにも触れられる! そして、渋谷エッグマン以外にも野外やプールや雪まつりなど無観客になってしまった昔のライブ会場についても話題が飛んでいく。たくさんの観客の前で今まで通り早くライブを観たいのはもちろんだが、想い出の無観客ライブ再現シリーズも、やはり観てみたい。
現段階での最新曲であり、コロナ渦におけてトータスのひとり多重録音によって作られた「タタカエブリバディ」。「こんな時の歌。どう盛り上がるかな? 一緒に歌って下さい!」とトータスは言ったが、今現在これほど響く楽曲はないだろう。前回の配信ライブでも思ったが、3人でのレコーディングが出来ていない楽曲であり、3人で合わせる時間もほとんど無かったはずなのに、或る意味、どの曲よりも鉄壁のサウンドが鳴らされているのが、本当に不思議だ。本気の心が、本気の魂が間違いなく込められている。コロナ渦での悶々とした想いが真空パックの様に込められた楽曲だが、トータスいわく第2章では無いが、歌詞も自分自身との向き合いに変えて、3人のレコーディングによる再構築版を作りたいという構想も語られた。
11曲を3人で鳴らしきり、本日のスペシャルゲストである真心ブラザーズの桜井秀俊(Gt)が呼び込まれる。「俺ギターから解放された! ハンドマイクで歌える!」とトータスは喜びを爆発させていたが、本当にハンドマイクで歌うトータスの姿はかっこいい…。桜井のギターがジャーンと鳴り、横で「SUN SUN SUN'95」を嬉しそうに歌うトータス。「ウルフルズA・A・Pのテーマ」では、トータスはステージを降りて、客席フロアで歌う。無観客のフロアであり、画面越しに観ているにも関わらず、解放されまくったトータスを観ていると、こちらまで解放されまくった気分になる。
ラストナンバー「ガッツだぜ!!」が終わり、楽屋に戻る4人。楽屋での会話もマイクが拾う。「舞台があるって、気持ちが違う!」と言うトータスの声が漏れ聴こえてくる。無観客配信とは言え、舞台で歌うだけで、こんなにもバンドは輝いて爆発するのかと改めて驚かされた。アンコールは「バンザイ~好きでよかった~」で〆られ、この日は終了。2時間という時間的にも17曲という内容的にも、たっぷりと心から満足できたライブだった。【文・鈴木淳史】
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